ア ン ド ロ メ ダ






きっと僕はもうずっと片思いだったんだ。
ずっと、ずっと、深く、汚く、でも何より純粋な部分でも彼に「愛」を与えようとしていた。しかし彼は、もう驚くほど美しく、何より誰より優しかったものだから
僕はずっと片思いのまま、そして下手をすればその片道切符な「愛」にも気付かず、優しい彼になにより残酷な「愛」を与え続けることになるのでしょう。

彼を愛していたのです。



「うん・・・。」
シーツが肌を滑る音と、衣擦れ、わずかなスプリングの軋む音以外は全部自分の淫猥な声だけだった。まだ甘さの残る愛撫に、誘導するように強く首に回した腕に力を込める。彼の長い髪が自分の肌に触れ、くすぐったさに顔を弓なりに反らせると
見なれた、でも少し自分の部屋とは違う薄暗い天井が目に入った。
「黄雅・・・もういいから。」
きて、と誘うと一瞬躊躇するかのように動きが止まり、間もなく僕の体を隠すように覆い被さった。
「あっ・・・。」
優しい黄雅のセックスは残酷なくらい甘く、丁寧で。
強制的に行われているのにも関わらず僕に「愛」を与えるフリをやめない。慣れた天井が霞みはじめ僕は自分の絶頂を迎えると、消えそうになる意識と黄雅だけは絶対に離さず、乱れた息を整えることに必死になった。意識も黄雅も手放せば、もう帰ってこないような気がしていたのだ。
「ありがとう。気持ち良かった。」
口の中でごめんね、と呟く。セックスの後は毎回こうして声に出すこと無く謝罪している。臆病な僕は卑怯者。口に出すことでそれを認め、黄雅が居なくなることを恐れているから。終わればすぐに、僕の体の後始末の準備にかかる優しい黄雅はその口の動きを見ていないから(というよりはそのタイミングを見計らっているから)その謝罪は絶対に伝わることがない。と思っていた。
「ハルナ。」
何?と答えようとして答えが詰まる。唇が唇でもって塞がれていた。珍しい黄雅からのキスに、少し戸惑う。
「お前は何か勘違いをしていないか。」
「ええ?何が?」

───まさか、そんな、馬鹿な。

笑え、笑え笑え笑えいつものように。決して悟られるな。平常心。見抜かれてはならないこの動揺。術祖のように繰り返す。精神は入り乱れ、心ではもう一人の自分が大暴れしていた。まさかと思った。彼の聡明さを侮っていたのかもしれない。ばれていた?まだ大丈夫?薄暗い部屋なら、少しの冷や汗くらい誤魔化せる。

「俺は、ちゃんとお前を。」
愛を?
「僕も黄雅が好き、大好きだよ。」
愛だと!

自惚れるわけにはいかないのですだって何より誰より彼は優しいから。同情で引いて心を惹くのは決して難しいことではない、寧ろそうなるように僕はきっとすこしずつ誘導してきたのですから。そして思いどおりになって手に入れたのは無惨に彼に残した傷と、「愛」という名のカサブタ。笑わせる、こんな状態で手に入れたのに愛はめくれば全て溢れ出る、それをとどめる栓に過ぎないのだと!これを愛だと!!



そして僕は見ないようにまた蓋をする。彼に蓋をして僕を見せないように、僕自身にも蓋をして声をあげて泣けるように。僕はもうずっと前から片思いでした。それでも欲しくて欲しくて欲しくて堪らないものがあったのです。そして無理矢理押し付けて彼の優しさにつけ込み、僕は手に入れた フリをしていた。

だって彼を愛していたのです。







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